アートメイクとは皮膚の浅い層（表皮）に針で色素を入れて、肌自体を染色するメイク術です。タトゥー／入れ墨との違いは針を入れる深さの違いで、入れ墨は皮膚の深い層（真皮層）に染料を入れます。それによって持続期間も異なってくるんですね。入れ墨が永久的なのに対して、アートメイクは徐々に薄まっていって大体１～３年程度でリタッチが必要になります。

また、入れ墨は強い痛みが伴いますが、アートメイクは表面麻酔を使用するのでほぼ無痛に近いとされています。ただこの「無痛」は個人差があるので、アートメイクも多少痛いです（笑）。毛抜きで毛を抜く程度の痛みとよく言われていますね。

ちなみにアートメイクで針を入れる深さは0.02～0.03mmとされているんですが、それってサランラップ一枚分くらいの薄さなんですね。でも皮膚って場所によって厚みが違うし、人によって個人差もあるので、いくら技術が安定している施術者でも正確にその深さで刃を入れられているかと言ったら、正直難しい。「入れ墨よりは浅い深さ」というところですね。

そうですね。アートメイクの仕上がりとしても、深く入れすぎると線が綺麗に出なかったり、にじんだり、太くなったり。入れ墨のようなやや暗い色味になったりもするんです。インスタで見かける症例でも線の一本一本がマッキーみたいになっているものがあったりしますね…。施術直後は綺麗でも、その後時間がたつとにじんだりします。

カウンセリングを含めての時間は、眉とアイラインは３時間、リップは４時間。クリニックによって多少変わると思います。アイラインやリップは痛みが激しい場合なども時間が変わってきますね。

きっかけはやっぱり有名人の方が公表されたことが大きいですよね。ただそれがこうして広く受け入れられたのは、ベタッと塗りつぶされたようなイメージだった「昔のアートメイク」から、一本一本が本物の毛のようなナチュラルな「ストローク眉」が主流になったからだと思います。本物の毛のような仕上がりだから無毛や脱毛症の人も受けられたり、タトゥーに否定的な日本でも受け入れられたのでは。あと最近だとコロナの影響も大きいですね。

そうなんです。私がこれまで担当したお客様で最高齢は80代の方で、その方は眉だったんですけど、加齢によって目が見えにくくなって眉が描きにくいと。そういう、いつまでも綺麗にしていたいと思われる方が多いですね。年配の方は紹介で来られることが多いんですが、娘さんがお母さんにやってほしいって来られることもあります。男性のお客様も増えていて、最近も奥様がリップを受けて、それがすごく良かったからと旦那様が来てくださったりとか。

まずストローク眉とパウダー眉ですが、ストローク眉は前述のように一本一本毛を描き入れていくもの。パウダー眉は点々で入れていくものですね。ストローク眉は本物の眉みたいにナチュラルに、パウダー眉は比較的メイクをした時のような仕上がりになります。その二つを組み合わせた手法もありますね。

彫り方ですが、先端に針のついた電動の専用マシンで入れていくマシン彫りと、同じく先端に針のついたペン型の器具を使って手で描き入れていく手彫りの二通りあります。私がメインでやっているのはストローク眉で、ストローク眉は基本的に手彫りなのですが、マシンで入れる国もあるようです。同様にパウダー眉でも手彫りの人もマシンの人もいて、彫り方は施術者それぞれが得意とするやり方で行っている感じですね。

はい。でもお客様からしたら手法よりも最終的な仕上がりが大事だと思うので。「パウダーで入れてほしい」「マシン彫りがいい」とクリニックを探す方はあまりいないですよね。手法にこだわるというよりは自分の理想に近い眉の症例を出している施術者やクリニックを見つけるのが良いと思いますよ。

シェーディングは、ストロークに影を入れるイメージですね。一本一本の手彫りで描くストロークに陰影をつけて立体的に見せる技法です。部位によって毛量の差がありストロークだけでは物足りなさを感じる場合などにオプションとしてつける場合が多いです。これも手彫り・マシンどちらでもできます。※アートメイクの手法の参考はこちら

1Dから6Dまでありますね、5Dはあまり聞かないですけど。これはずばり、クリニックそれぞれで定義が異なっていて、共通の定義がありません。ですが一般的に1Dや2Dは平面のみでペタッとしたアートメイクを指すところが多く、3Dや4Dは立体的な毛並みに見えるアートメイクにクリニックによっては＋パウダーやシェーディングを指すところが多いように思います。6Dについては「メディカルブロー」さんの商標登録です。なので、それぞれのクリニックのメニューを見て内容を確認するのがベストですね。

メリットはやっぱり、24時間つねに整った眉でいられること。朝起きたままで眉があって、メイク時間の時短にもなります。アートメイクで容姿が整うことで自信に繋がるというのも大きいですね。私自身、元々眉がなくて顔にコンプレックスがあったんです。「大人になったら絶対メイクで綺麗になるんだ！」なんてずっと思っていて（笑）。若い頃はそれなりにメイクしていたんですけど、大好きな海に行ってアグレッシブに泳いで浜に戻ってくると周りから「顔全然違うね」って言われるなんてこともあったり…。やっぱり、そういう悩みがなくなりましたよね。

すっぴんで近所のコンビニに行けるとか、眉を描かなきゃ外に出れない！というのがとにかくなくて、自分の持ち時間が増えたような気持ちです。メイクも好きだったけど、あまりしなくなりましたね。

そうですね。私は眉以外もアートメイクしていますが、どれも本当にして良かったなと思っています。お客様でも、やってよかった美容施術の上位に入るとおっしゃる方がすごく多いんですよ。

まず価格が安くないところですね。二回セットで大体10万円前後かかるので、永久的なものでもないですしやはり高額と感じる人はいらっしゃると思います。それから消したくなった時。レーザーで除去することはできますが、費用もかかるし簡単に消せるわけではないので、基本は一定期間持続するものということは念頭に置いて受けることですね。

施術者が新人だったとか根本的な技術の問題の場合や、担当者と相性が合わなくて、ということもあると思います。例えば私はけっこうズバズバ言うタイプで、それを良しと思ってくださるお客様も多いですけど、やっぱり100人いて100人全員が合うわけではなくて苦手な人もいるだろうと思います。だから当院では指名を変えられるようにもしているんですよ。

早くて一か月後でしょうか。アートメイクのダウンタイムは一、二週間とされますが、その後定着するまでに色の変化があるんです。その経過を見た後が望ましいので理想はそれくらい。ただどうしても一刻も早く除去したいという場合は、二週間経てばできなくはないかと思います。

お客様も皮膚を傷つける施術だという認識があるから、針を入れる前のデザインの段階で納得されていないまま受けることはそうないかなと。なのでめったにはいないと思いますが、「家に帰ったら家族に変だと言われてしまった」とか、技術的な問題でデザインと仕上がりが違って…などはあると思います。だからこそデザインはこちら側も慎重です。ただ、施術回数も２回から３回かかると必ずお伝えするんですけど、人によっては金額的なこともあって2回で仕上げたい方もいて。そういうときに満足度がちゃんと出せるかどうか、ということもあったりします。

あとデメリットとしては、ほかの美容治療を前後一か月は受けられないとかですね。

眉の場合は施術直後からの赤みが引くまでの期間（＝ダウンタイム）が当日程度なので、わざわざお休みを取る必要はないと思います。ちなみにアイラインは腫れが２～３日、リップは腫れとかさぶたが３～５日程度出ます。特にアイラインやリップはその期間お休みを取るか予定を避けていただくのが良いと思います。

泣きはらした後の目くらいですね。美容の手術をご存じの方でしたら二重埋没法の腫れぐらい、と言うとわかりやすいと思います。リップもいまはマスク生活なのでやりやすいとおっしゃる方が多いですが、気になる方はお休みがあると良いかもしれないです。

MRIは、使用するインクに酸化鉄（金属）が多く含まれていると受けられない場合があります。クリニックによって使っているインクはさまざまですが、まったく鉄を含まないインクはないと思います。いま日本では医療機関でしかアートメイクはできないですし、違法なクリニックでなければMRIを受けても問題ない含有量のインクを使用しているはずですが、MRIを受ける際には必ずその医療機関に申し出るようにしてください。ちなみに当院で使用している「PhiBrows」のインクもほぼ反応しないほどの含有量とされていて、私もMRIを受けた時異常はありませんでした。

これは、事前にパッチテストを受けられます。それで48時間何もなければおそらく問題ないだろうと。ただ100％保証はないので、真剣に金属アレルギーでお悩みの方はやはり一度きちんと病院で受けられることをおすすめしています。顔って大事な部分ですし、こちらも「大丈夫ですよ！」とは言い切れないので、金属アレルギーをお持ちの方に無理して受けるよう勧めることはしていません。

施術をお断りさせていただく場合が、感染症の方（HIV、A型肝炎、Ｂ型肝炎、梅毒など）、妊娠の可能性のある方・妊娠中の方、すでにアートメイクを受けられていてその傷がふさがっていない方。施術箇所に皮膚疾患のある方、ケロイド体質の方。また、不妊治療中の方、糖尿病、高血圧などは主治医の許可のもと自己責任で受けていただきます。また美容整形や美容施術を直近で受けている方は一定期間空ける必要があります。大きい病気をしてる方は一度相談してほしいのと、詳しくは施術を受けるクリニックの注意書きを必ず確認してくださいね。

アートメイクは医療行為のため、日本では法律で医師か看護師の免許のある人しかアートメイクを施術することができないんです。その上で、スクールに通うなどアートメイクの知識や技術を磨く必要があります。看護師免許のみの施術者は医師の管理下で施術を行わなければならないとも決められていて、個人でやるということは基本的にできないという意味合いがありますね。施術場所も医療機関と定められています。

ヨーロッパ発祥の毛並みアートメイクのブランドです。イメージとしてはライセンスのようなものでしょうか。PhiBrowsでは技術者のレベルに応じてランクが設けられていて、日本でも多くのクリニックがこのランクを参考に独自のランクを設けているんです。なのでクリニックごとに評価基準は変わりますが、症例数や指名数で施術者のランクは決まっているのだと思われます。※参考記事

ちなみに「施術者選びが難しい」という声をよく聞くのですが、好みは人それぞれなので症例の中から好みの合うアーティストを選ぶのが良いと思います。でも正直、いまインスタで見られる症例だけだと大して変わらないと思うんですよ。

私がお客様にもよくお伝えしている選び方としては、気に入ったデザインや仕上がりの投稿を「いいね」していく。それでいいねの数が一番多かった施術者はきっと好みなのだと思います。ランクというところで言うと、やはり上のランクの施術者のほうが技術があるので、それも一つ指標となるかなと。あと個人的にはインスタでも直後だけでなく経過を見せている人。そういう施術者は技術に自信がある人だと思います。そういったポイントと、あとは金額的なところの兼ね合いですね。ランクが上の人のほうがやはり値段も高くなるので。

はい、なるべく載せるようにしています。ちゃんと経過まで見て決めてもらいたいと思っているからです。加工も最低限の肌加工くらいはしますが、やりすぎず誠実にがポリシー。やっぱりお客様もこちらもお互い気持ちよく施術を進められて仕上がりに満足いただけるように、本当にやってもらいたい人にやってもらうのがいいと思っていて。来てくださったお客様にもいつもそう説明していますね。