美容医療コラム
この記事の概要
年齢を重ねるごとに気になるのがしみ・そばかすです。できてしまったしみ・そばかすを消す方法は大きく分けると2種類あります。美容クリニックで行われるしみ治療の方法と自宅で手軽に行えるホームケアの方法をそれぞれ解説します。
何気なく鏡を見ていたらしみ・そばかすがあることに気が付いてしまったという経験はありませんか?いつのまにかできてしまったしみ・そばかすは、一度気になると悩みの種になってしまうものです。今回は美容クリニックで行われるしみ治療と自宅で手軽に行えるホームケアについて解説します。
いつのまにかできてしまったしみ・そばかすは、自分で消せるものと消せないものがあります。ただし一度しみになってしまうと、すぐに消すことは容易ではありません。しみ・そばかすを消すためには、少しずつ薄くしていくような根気が必要です。
また、しみ・そばかすができてしまった皮膚の層によっても違いがあります。表皮層と真皮層にできるしみ・そばかすのメカニズムと消す方法をみていきましょう。
表皮は厚さ0.1mm~0.3mm程と薄く、表皮細胞と呼ばれるケラチノサイトと色素細胞であるメラノサイトなどからできています。茶色や黒みがかった色のしみは、表皮の深部である基底層にできたものです。
表皮は、外側から角質層・顆粒層・有棘層・基底層の4つの層に分かれています。この一番下の基底層にあるのがメラノサイトです。メラノサイトは肌に紫外線や外的刺激・ストレスなどが加わるとしみの基となるメラニン色素を生成します。
生成されたメラニン色素は細胞内のメラノソームという小胞に蓄積され、メラノソーム内のメラニン色素がいっぱいになるとメラノソームの先端からケラチノサイトという表皮細胞に受け渡しされます。このときメラニン色素が肌内部に現れるのです。
肌は新陳代謝(ターンオーバー)によって日々生まれ変わっているので、徐々に肌表面に向かって新しくできた肌細胞が押し上げられていきます。ターンオーバーのサイクルは20代なら20日~30日前後、30代~40代は40日~50日前後で行われます。
日焼けした肌が1ヵ月前後で元に戻るのは、このターンオーバーが行われているためです。しかし、長時間強い紫外線を浴びるとメラニン色素の生成が活発になります。メラニン色素の生成が活発になっている肌に外的刺激やストレスなどが加わると、ターンオーバーの乱れを引き起こします。すると、大量のメラニンが肌内部に滞留することになり、色素沈着を進行させることにつながります。
表皮層にできたしみ・そばかすは基本的にターンオーバーによって徐々に薄くなるため、適切なホームケアを行うことで薄くしたり消したりすることが期待できます。ただし、しみ・そばかすの基になるメラニン色素が過剰に生成されたり、ストレスや加齢によってターンオーバーが乱れるとメラニン色素の排出が追い付かず自力では消すことがむずかしくなります。
通常メラニン色素は基底層に存在しているのですが、基底層より深い真皮に入り込んでしまう場合があります。真皮に入り込でしまったメラニン色素はその深さから、灰色や青みがかった色に見えます。このしみは「ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)」と呼ばれています。ADMは太田母斑の一種で左右対称に現れる場合が多いです。
真皮にできたしみ・そばかすは、肌細胞ができる基底層より深く皮膚の奥にあるので、ターンオーバーによって排出することができず、そのまま残ってしまいます。真皮層にできたしみは自分で消すことはむずかしいので気になる場合は美容クリニックで相談しましょう。
老人性色素斑、炎症後色素沈着、肝斑などのしみは、セルフケアで予防や薄くすることが期待できます。自分でできる対策は大きく分けて3つあります。それぞれについて詳しく解説します。
まずはターンオーバーを整えることからはじめましょう。ターンオーバーを整えるためには、毎日の洗顔やクレンジング、保湿ケアなどの見直しがとても重要です。
洗顔・クレンジングを行うときは、ゴシゴシ擦ることはやめましょう。肌を擦る行為は表皮を傷つけることになり、ターンオーバーの乱れにつながります。たっぷりと泡立てた泡で包み込むようにして洗い、水分を拭き取るときはタオルでおさえるようにして拭き取ります。
洗顔後そのままにしておくと肌は水分を失い乾燥してしまいます。乾燥も肌にダメージを与えターンオーバーが乱れる原因になるので、洗顔後はすぐたっぷりの化粧水で保湿し、美容液・乳液・クリームでフタをすることで水分を肌に閉じ込めましょう。
さらに、ピーリングという肌表面の古い角質を剥がす方法もあります。肌に残ってしまった古い角質を剥がすとメラニン色素の排出を促すことが期待できます。頻度としては、1週間~2週間に1回を目安に行います。
人の体は呼吸をすると取り込んだ酸素の一部が活性酸素に変化します。この活性酸素が過剰分泌されると、正常な細胞を傷つけてしまいます。すると、細胞を修復するためにメラノサイトからメラニン色素が発生し、しみの原因になります。活性酸素が原因のしみ・そばかすには、抗酸化作用のあるものを摂取または塗布する方法がおすすめです。
代表的な抗酸化作用のある栄養素はビタミンCです。ビタミンCは活性酸素の発生を抑制したり、働きを弱めたりすることが認められています。しかし食事として摂取するのではなく、肌に塗布する場合はビタミンC誘導体に変化させなければ改善が期待できないので注意が必要です。
そのほか、ビタミンAやビタミンE、リコピン、カテキン、ポリフェノールなどにも抗酸化作用があります。
先述のビタミンCには、メラニン色素の生成自体を抑える働きも期待できます。黒く酸化してしまったメラニン色素を元に戻すだけではなく、メラニン色素の元となるチロシンの活性を抑制してくれます。
メラニン色素の生成を抑制するために一番大切なことは、紫外線を浴びないことです。肌に塗布する日焼け止めのほかに、日傘やUV加工の衣類や帽子・サングラスなどを併用し、できるだけ紫外線を避けるようにしましょう。
日焼け止めは一度塗れば一日安心!というわけではなく、2~3時間おきにこまめに塗り直す必要があります。塗布する量にも注意が必要で、大体1平方メートルあたり500円玉程度の量が理想的です。「いつもより多すぎるかな」と感じるくらいが適量だといえます。
ホームケアで消せないしみは、美容クリニックのしみ治療で消せる可能性があります。では、美容クリニックで受けられるしみ治療とはどのようなものがあるのか解説していきます。
美容クリニックで行う治療の代表的なものがレーザー治療です。
しみ治療に使用されるレーザーは黒い色に反応する特性があります。つまり、レーザーを肌に照射するとしみの基であるメラニン色素のみに熱エネルギーが伝わり、メラニン色素を破壊するのです。レーザーによって破壊されたメラニン色素は老廃物となり、ターンオーバーによってやがて排出されます。
治療は、まず医師のカウンセリングを受け、治療方針や使用するレーザーの選択・施術範囲などを決めます。照射範囲や使用する機器にもよりますが、一回の治療時間は約20分~30分程度で、照射終了後は保湿剤や赤みを抑えるクリームを塗布します。老人性色素斑や肝斑、炎症後色素沈着など幅広いしみに使用できるのが魅力です。
ピーリング治療は別名「ケミカルピーリング」とも呼ばれ、グリコール酸やサリチル酸、トリクロロ酢酸、乳酸、アミノ酸など肌を溶解する酸の力を利用した治療です。薬剤が肌表面の古い角質を溶かして剥がし、新しい皮膚の再生を促します。
治療方法は、まず医師によるカウンセリングを受けてから洗顔・クレンジングを行い、マッサージを行いながら薬剤を塗布します。治療時間は約15分~20分程度で、その後薬剤を優しくていねいに洗い流します。ピーリング後は乾燥しやすいので軟膏やクリームなどを使用し保湿します。
ピーリングはホームケアでも行えますが、市販のものとクリニックで導入されているものでは薬剤の種類や濃度に違いがあります。一回の施術で終了する人もいますが、劇的な変化が現れるものではないため、基本的には3週~4週間隔で何度か施術する場合が多いです。
内服薬の成分には、L-システインやビタミンC、トラネキサム酸などがあります。ビタミンCには、メラニン色素の生成を抑制するほか、メラニン色素の無色化や肌の炎症を抑える働きがあります。L-システインには、メラニン色素の排出を促すことが期待でき、ビタミンCと一緒に摂取することでより排出を高めることが期待できます。トラネキサム酸には、メラニン色素の発生をブロックする働きがあり、とくに肝斑の治療に有効だといわれています。
このほかにもビタミンB2やB6、ビタミンEなどもビタミンCをサポートする成分として配合されている場合があります。
外用薬での治療は、主にトレチノインとハイドロキノンなどが使用されています。トレチノインはメラニン色素の排出を促す働きが期待でき、ハイドロキノンは別名「肌の漂白剤」ともいわれ、メラノサイトの動きを抑制することでメラニン色素の生成を予防することが期待できます。
しみ・そばかすは、自宅で手軽にできるホームケアと美容クリニックの治療で消すことが期待できます。しかし、しみのタイプや肌のコンディションによってホームケアでは消せないものもあります。美容クリニックでは専門の医師が一人ひとりの状態にあった治療を提案してくれます。肌の専門家である医師指導の元、適切な治療を行うことでしみの目立たない肌を目指しましょう。