美容医療コラム
この記事の概要
エステとクリニックには使用できる機器や薬剤に違いがあります。それぞれの特徴と違いを知ることで、自分の悩みや目的にはどちらが合っているのかがわかります。
シミやしわなどの肌トラブルや気になる体毛などの悩みを解消したいと考えたとき、どこで施術を受ければいいのか迷われる方も多いのではないでしょうか。これらの悩みを解消する場所として検討されるのがエステやクリニックです。エステとクリニックは似ていると感じるかもしれませんが、実は大きな違いがあります。今回はエステとクリニックの特徴と違いについて解説します。
総務省により公表された『日本標準産業分類(*1)』によると、エステティックサロンとは「手技または化粧品・機器等を用いて、人の皮膚を美化し、体型を整えるなどの指導又は施術」に該当する業種と定められています。また、エステティックサロンは外見を美しい状態に保つための施術だけではなく、一人ひとりの肌や心の特徴を踏まえた上で満足感と心地よさを得られるような空間や施術を提供することで、リラクゼーション効果を期待することができます。
エステティックサロンのスタッフは国家資格の取得が義務づけられていません。そのため、医師免許を必要とする医療行為や美容師免許・理容師免許などを必要とする行為や施術を行うことはできません。
*1出典:厚生労働省「55_エステティック業」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10321.html)
美容クリニックとは、医療機器・医薬品を使用するといった医療行為にあたる治療や施術を提供できる医療機関です。美容クリニックのスタッフは医師免許や看護師免許といった国家資格を取得している人が多く、医療行為にあたる施術を受ける際は、医師の診察を受けたあとに、医師もしくは看護師が施術を行います。医療行為に該当しない施術を受ける場合は、これらの国家資格を持っていないスタッフが対応することもあります。エステティックサロンと比較した美容クリニックのもっとも大きな特徴は、医療行為を伴う施術を提供できるという点です。
ただし、美容クリニックを受診する際に注意しなければいけないことがあります。医療機関といえば保険診療が受けられると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的に美容を目的とした診療や施術に関しては保険診療は適用されません。美容クリニックで受ける施術の多くは自由診療(自費診療)となっており、それぞれの美容クリニックにて独自の料金が設定されています。
エステと美容クリニックにはいくつかの違いがあります。先にご紹介したようにスタッフが医師や看護師などの医療に関する国家資格を取得しているかどうかによって、施術内容に大きな違いがみられます。
性別や年代問わず人気のある施術の一つ、脱毛を例として挙げてみましょう。エステも美容クリニックも目的は「脱毛=体毛を除去すること」です。脱毛という目的は同じではありますが、エステと美容クリニックでは施術の方法やアフターケアにおいて対応の違いがあります。ここではその中から3つの違いについて解説していきます。
エステも美容クリニックも目的によっては、機器を使用して施術を行うことがあります。しかし機器によっては美容クリニックでは使用できても、エステでは使用できないものがあります。それぞれの特徴でご紹介したとおり、美容クリニックには医師免許や看護師免許を持ったスタッフがいるため医療行為を行うことができます。そのため美容クリニックでは、医療機関でのみ使用が許可されているような照射出力の高い医療用レーザー機器を用いて脱毛の施術をすることができます。一方、エステでは医療行為が認められていないため、照射出力が高い医療レーザー機器を使用することができず、医療行為に該当しないよう法律で定められた美容機器しか使用できません。
わかりやすく解説を行うために再度、脱毛を例として挙げてみます。脱毛に関しては法律上、エステでは長期的効果のある施術を行ってはいけないと定められており、レーザーを使用した施術は許可されていません。そのためエステで使用できる脱毛機器は、低出力の光脱毛機器(IPL)のみと定められているのです。レーザー脱毛機器も光脱毛機器も脱毛の原理は同じですが、光脱毛機器はメラニンへの吸収度がレーザー脱毛機器に比べて低いため、何度も施術に通わなければいけません。よって、より短い期間で高い効果を求める場合は、美容クリニックでの脱毛が目的に合っているということになります。
エステと美容クリニックでは、施術の際に使用できる薬剤においても違いがあります。使用できる薬剤の違いについても、機器と同様に医療機関であるかどうかが関係しています。
美容クリニックはエステと同じように美容を目的としていても、エステで使用される薬剤よりも高い治療効果を望める薬剤が使用できます。また薬剤の種類によっては、エステで使用される薬剤と美容クリニックで使用される薬剤の名前が同じということもあるのですが、よく見てみるとその薬剤の濃度に違いがあることが多いです。美容クリニックでは、肌悩みの改善や治療を目的とした濃度が高い薬剤が使われ、エステで使用されるものは薬剤としての位置づけではなく「化粧品」として扱われています。
また施術の内容によっては痛みを伴うものもありますが、美容クリニックでは痛みによる苦痛を緩和するために、麻酔を使用することができます。麻酔も医療行為に該当するため、エステでは使用できません。
その他にもエステや美容クリニックで施術を行う際に、施術内容によっては肌に負担がかかる場合があります。施術後にもし何かしらの肌トラブルが起きた場合、美容クリニックであれば診察後に内服薬や外用薬などを処方してもらうことができるため、トラブルに迅速に対応できるといった違いもあります。
これまで医療機関である美容クリニックとエステの違いについて紹介してきましたが、効果やトラブルへの対処法だけに視点をおくと美容クリニックを選んだ方がいいといったイメージをもった方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、エステよりも美容クリニックの方が優れているとおすすめしているわけではありません。エステだからこそ得ることができる、美容クリニックとは違った効果があります。それは「リラクゼーション効果」です。
とくに忙しい毎日を送っている女性にとっては、落ち着いた雰囲気のサロンでキレイになるための自分だけの時間を過ごすことは癒しの時間となるでしょう。また手技などの施術によるリラックス効果や非日常的な空間を体験することで、リラクゼーション効果を得ることが期待できます。気になる悩みを解決するだけではなく、こうしたリラクゼーション効果を体感できるのがエステの大きな特徴です。
エステと美容クリニックの特徴と違いについて解説しました。同じ目的であっても、エステと美容クリニックでは施術に使われる機器や薬剤に大きな違いがあります。効果が高いからといって美容クリニックをおすすめするわけではなく、自分が何を目的として施術を受けるのかによって、適した場所は変わります。
キレイになるための選択肢や方法が増えた今の時代、自分の目的をしっかりと把握して、肌悩みや目的に合った施術を選ぶことが大切ではないでしょうか。エステや美容クリニックでの施術を検討している方は、しっかりカウンセリングを行い、自分が納得できる場所で施術を行うようにしましょう。