美容医療コラム
この記事の概要
ニキビを治す方法は、ホームケアと美容皮膚科での治療に分けられます。手軽にできるホームケアと美容皮膚科でできるニキビ治療には、どのような違いがあるのか解説します。
年齢・性別を問わず、多くの方が悩まされるニキビ。いつのまにかできてしまったニキビは、治療方法を誤ると症状が悪化してしまう場合もあります。ニキビの基礎知識とホームケア、美容皮膚科で行うニキビ治療にはどのようなものがあるのか解説します。
ニキビは正式に、尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)という皮膚の病気です。過剰な皮脂の分泌や毛穴の詰まり、またニキビ菌(プロピオニバクテリウム・アクネス)の繁殖が原因で起こります。
ニキビは症状により5段階に分類されます。第1段階である白ニキビ「閉鎖面皰(へいさめんぽう)」や第2段階の黒ニキビ「開放面皰(かいほうめんぽう)」は、毛穴の出口が塞がり皮脂が毛穴内に溜まっている状態です。このまま何もケアをしないと、ニキビの原因菌であるアクネ菌が増殖します。第3段階は炎症を起こし、赤く腫れ上がった赤ニキビ「赤色丘疹(せきしょくきゅうしん)」となり痛みを伴います。さらに悪化すると、第4段階であるニキビが化膿し黄ニキビ「膿疱(のうほう)」となります。もっとも悪化した状態である第5段階は、紫ニキビ「嚢腫(のうしゅ)」と呼ばれ、ニキビ内に血液や老廃物が溜まっている状態へと変化していきます。
第1段階である白ニキビと黒ニキビは、ホームケアでも改善が期待できます。
白ニキビは毛穴に角質が詰まり、本来外に排出されるはずの皮脂や老廃物が毛穴の中で膨らんでしまった状態です。化粧品の汚れや洗顔料の残りが原因で、毛穴が詰まることもあり、肌表面はざらざらしている場合があります。まだ炎症も化膿もしていないため、この段階で治療すると早期回復が見込めます。
黒ニキビは、白ニキビが酸化した状態です。毛穴に詰まった皮脂や角質は、空気に触れると酸化し黒く変色します。毛穴の黒ずみは汚れと誤解されがちですが、この状態を放っておくとやがて炎症を起こし、赤ニキビや黄ニキビになる恐れがあります。
黒ニキビは白ニキビより黒く膨れているため、触れたときのざらつき感が増します。黒ニキビはおでこや小鼻のTゾーンなど、皮脂の分泌が多い部位にできやすいです。白ニキビより進行している状態ですので、放置すると炎症を起こしニキビ跡が残る場合もあります。
白ニキビや黒ニキビを見つけたとき、まず行うべきホームケアは洗顔の見直しです。ニキビに直接指が触れないよう、しっかりと泡立てた洗顔料で優しく洗いましょう。ゴシゴシこすったり、角質を粘着テープなどで取り除いたりする行為は、肌にダメージを与えます。さらに毛穴が大きく開いてしまい、皮脂や汚れを溜め込みやすくなるためNGです。
また、乾燥対策も重要です。肌が乾燥すると皮脂の分泌が活発になり、毛穴が詰まりやすくなるからです。洗顔を行った後は、化粧水や乳液でしっかりと保湿しましょう。
赤ニキビ・黄ニキビ・紫ニキビなど、炎症を起こしているニキビは美容皮膚科での治療がおすすめです。
赤ニキビは、皮脂を栄養素としたアクネ菌が増殖し、炎症を起こして赤く腫れ上がった状態です。触れると痛みがあり、誤ったケアをするとさらに悪化します。
黄ニキビは、赤ニキビが化膿した状態です。アクネ菌のほかに黄色ブドウ球菌が増殖しており、それらの菌の死骸が膿となり溜まっています。触れると痛みがあり、自分でつぶすとえぐれた跡になる恐れがあります。
紫ニキビは、ニキビの中でもっとも悪化した状態です。ニキビの中に血液や老廃物が溜まると、赤黒い色や紫色に腫れてしまいます。触れると固くごりごりとした芯を感じるのが特徴で、あまり痛みを感じませんが自然治癒は難しくニキビ跡が残ります。
このような状態のニキビは、ホームケアだけでは改善が見込みづらく、誤った対処により悪化させてしまう危険性があります。美容皮膚科では、ニキビの改善を目指した治療を行っています。医療機関でしか使用できない医療機器や医薬品が用いられるため、諦めていたニキビも治る可能性があります。
一般的な皮膚科と美容皮膚科の違いは「目的」です。皮膚科と美容皮膚科の最終的な目的、診療内容・保険適用の有無や治療方法などについて解説します。
一般的に皮膚科は皮膚にできた湿疹やあざ、水虫などの皮膚病や皮膚疾患を「治癒する」ことが目的です。皮膚科では内服薬・外用薬のほかに、ビタミン剤や漢方などを用いて保険診療内で治療しますが、処方される薬や使用機器が限定されています。
また、皮膚科の目的は症状の治癒なので、ニキビが治った後の肌の赤みや残ってしまった凸凹などは皮膚疾患にあたらず、診療対象外になる場合があります。
美容皮膚科では、症状の改善とともに「肌状態の向上」を目的としています。ニキビだけではなくシミや毛穴の開き、妊娠線、しわなど、患者さんの個人的な悩みに対してアプローチします。基本的に自由診療となる場合が多く、自由診療は保険診療に比べ費用は高額ですが、患者さんの求める状態に対して一人ひとりに合わせた治療を目指しています。治療は一般的な皮膚科と同じように、薬の処方や医療機器を使用して行います。さらにサプリメントの使用に加え、美容を目的とした機器の使用など、美容皮膚科ならではの治療を行います。
ニキビ治療においては、できてしまったニキビの治療だけではなく、ニキビをできにくくする予防やニキビ跡の治療も行っています。
自己流で誤ったケアを続けていると、ニキビがさらに悪化する恐れがあります。そうなる前に、医療機関への受診がおすすめです。美容皮膚科では、ニキビの状態にあわせてさまざまな治療方法を取り入れていますので、どのような治療方法があるのか確認してみましょう。
ニキビ治療に使用されるレーザーには、さまざまな種類があります。
ニキビ治療の一つである面皰圧出術(めんぽうあっしゅつじゅつ)では、炭酸ガスレーザーでニキビに小さな穴を開け、面皰圧出器と呼ばれる専用の機器でニキビの中に詰まった皮脂や老廃物を絞りだします。その場で詰まりを解消するため、即効性が期待できる治療法です。
シミ治療や脱毛などに使用されるアレキサンドライトレーザーは、ニキビ治療にも用いられます。毛包組織に熱エネルギーを与え破壊すると、皮脂や老廃物が毛穴に詰まりにくくなります。すでにあるニキビだけではなく、これからできるニキビの予防にも用いられる治療方法です。
レーザー治療はニキビ治療に期待できる半面、肌トラブルが起こりやすい治療方法です。そのため、妊娠中や光線過敏症・高血圧・糖尿病などの持病をお持ちの方は、施術が難しいケースもありますので、必ず事前に医師に確認しましょう。
医療機関で行われるピーリングは「ケミカルピーリング」とも呼ばれ、肌表面に酸性の薬剤を塗布して溜まった古い角質を溶かします。毛穴に溜まっている古い角質を溶かし、ニキビの原因となる皮脂や老廃物を取り除いて、ニキビをできにくくする治療方法です。
角質を取り除くとターンオーバーが整い、赤く残ってしまったニキビ跡や色素沈着したニキビも目立ちにくくなります。
しかし、こちらもレーザー治療同様、肌への刺激があります。施術後は新しい皮膚がむき出しの状態になっており、乾燥しやすいです。しっかりと保湿し、紫外線を避けましょう。
内服薬・外用薬では、抗生剤やビタミン剤、抗炎症剤などを使用します。
内服薬の場合、抗生剤により細菌を殺す方法や漢方を用いて皮脂・炎症を抑える方法、経口避妊薬(低用量ピル)を使用し女性ホルモンを調整する方法があります。ピルに含まれるエストロゲンにはニキビの発症を抑える作用が期待でき、また漢方にも女性ホルモンの調整を目的としたものがあります。
外用薬の場合、アダパレンや過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン、ナジフロキサシンといった成分が使用されます。アダパレンは毛穴の詰まりや皮脂の分泌を抑制する作用があり、ニキビのできにくい肌にするだけではなく、さまざまな段階のニキビの改善が期待できます。
過酸化ベンゾイルは、アクネ菌の抑制と毛穴の詰まりの解消が見込めます。さらに長期間の使用で、ニキビ跡の改善も期待できるとされています。
どの薬も自己判断で使用・中止するのではなく、必ず医師の指示にしたがって治療を行いましょう。
光治療は特殊な光を照射して、ニキビやシミの改善を図る治療方法です。IPL(Intense Pulsed Light)、PDT(Photo Dynamic Therapy)、LED(Light Emitting Diode)の3種類があり、近年注目されているのはLEDを使用した新しい治療方法です。ニキビ治療には青色・黄色・赤色のLEDが使用されていますが、その中でもとくに青色LEDはアクネ菌を殺菌作用があるとして、赤ニキビへの有効性が確認されています。
光治療とレーザー治療の大きな違いは、波長(エネルギーが届く深さ)とパルス幅(照射時間)です。光治療はレーザー治療に比べて、皮膚の浅い部分に作用し、長いパルス幅で広い範囲を照射します。レーザー治療のように痛みが少なく、照射後に肌を保護する必要がありません。
ニキビは状態によって、ホームケアで改善が見込めるものと、医療機関での治療が望ましいものがあります。美容皮膚科で行えるニキビ治療は、すでにあるニキビの治癒だけではなく、ニキビができにくい肌にする肌状態の向上も目的にしています。
自分の肌の状態にあわせて医師と治療方法を相談し、トラブルのない肌を目指しましょう。