美容医療コラム
この記事の概要
形成外科と美容外科はどちらも見た目をよくするという目的は同じです。しかし、治療の対象となる部位がどのような状態であるか、どのような原因によるものかによって違いがあります。
自分の外見にコンプレックスを抱えている、人の目が気になり気持ちがふさぎ込んでしまう、このように自分の容姿が気になり自分らしい生活を送ることができず、外見を改善したいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。外見を美しい状態に保つための治療は形成外科や美容外科で受けることができます。
形成外科と美容外科は外見を美しい状態に保つといった目的は同じですが、治療する目的や治療を行う部位がどのような状態にあるのか、またその原因によって2つの違いが見られます。いまの時代、インターネットやSNSの普及により美容外科に対する意識も変わりつつあります。美容外科への関心が高くなっているいまだからこそ、美容外科の基本を知っておくことが大切です。今回は形成外科と美容外科の違いと美容外科の基本について解説します。
形成外科は先天的な異常や病気・怪我などによる身体の表面の変形を治療する診療科で、頭や顔を含めた身体全体が治療の対象となります。形成外科の治療内容は、火傷の治療をはじめ、怪我や手術後の皮膚の傷跡やケロイドの修復、先天性のアザの治療、皮膚や皮下にある腫瘍の切除、顔面骨折の治療など多岐に渡ります。また乳がんで切除された乳房の再建なども形成外科で行われています。
先天性の異常や病気・怪我などが原因で社会生活に支障をきたしている状態は治療が必要と考えられるため、保険診療で治療を受けることができる場合が多いです。しかし国が認めていない治療を行う場合や承認されていない薬剤や機器を使用した治療の場合は、保険診療が適用されません。
美容外科は形成外科の中の一分野であり、美容外科も形成外科と同じように外見を美しい状態に保つことを目的としています。しかし目的は同じであっても、美容外科は医学的には正常と考えられる部位をさらに美しい状態に保つことを目的として行われる治療であり、治療に訪れる方が自身のコンプレックスに悩んでいたとしても、治療を行う部位に関しては生活を送る上で機能的に何の問題はありません。
美容外科で一般的に行われる治療の具体例は、二重まぶたにしたり鼻を高くしたりする手術、脂肪吸引、しわやシミの治療、医療脱毛、豊胸手術などです。これらの治療には保険診療が適用されず、美容外科が独自で設定した料金を支払う自由診療となります。
美容外科は広く捉えると形成外科に含まれることや、外見をよくすることが目的であることから同じように思われることもあるかもしれませんが、大きく2つの違いがあります。
前章でもお伝えしましたが、形成外科と美容外科では治療の対象に違いがあります。形成外科は基本的に先天性の異常や病気・怪我などによって社会生活を送る上で支障があると認められた外見への治療が対象となります。つまり、外見の異常によって苦しむ方への治療が目的です。
一方、美容外科は先天性の異常や病気・怪我などが原因ではなく、機能的な問題や異常は見られませんが、自分の容姿を現状よりも美しくしたい、という方への治療が対象となります。美容外科は自分のコンプレックスを解消することが大きな目的といえるでしょう。
形成外科と美容外科の2つ目の違いは保険適用についてです。形成外科で受ける治療に関しては、基本的に保険診療内で行うことができます。保険診療の適用対象となるためには、その部位の状態になっている原因が病気などによるものかどうか、もしくは病名の存在する病気が原因であるかどうかということが判断の基準となります。
美容外科は治療対象の部位に機能的な問題がなく、自身の容姿へのこだわりやコンプレックスからくる見た目の改善を図るものであるため、保険診療適用外となることが多いです。つまり自由診療であることから、治療にかかった料金をすべて自己負担する必要があります。保険診療が適用されている場合は、どこの医療機関で治療を行っても同じ治療内容であれば料金は同じですが、自由診療の場合は同じ治療を受けた場合でも医療機関ごとに自由に料金を設定することができるため、医療機関によって料金に差があります。
ここで保険適用の違いについて「二重まぶた」の治療を例に挙げてみます。
例えば一重まぶたにコンプレックスを抱えている女性がいたとします。その方が二重まぶたにしたいといえば、それは美容外科を受診することになり自由診療となります。
しかし同じように二重まぶたの手術を行う理由が、上まぶたを上げる筋肉の働きが低下したことによる機能的なものが原因で目が開きにくくなった「眼瞼下垂(がんけんかすい)」という疾患だと医師が診断した場合は、疾病によるものであるため保険診療の適用対象とされます。
このように治療後の目的は同じであっても、その治療を行う原因がどこにあるのかによって担当する診療科が異なり、保険適用の有無も異なります。
形成外科では先天性の疾患や病気などの原因によって負った傷や欠損・変形などの異常に対する外科的な治療を受けることができます。一方、美容外科は医学的には正常である部位の外見をよりよくするための処置が行われます。そのため、見た目の美しさにこだわるなら、美容外科の方が自分の希望に沿った外見へと近づけることができます。一般的に知られている「整形」は美容外科が得意とする分野といえるでしょう。
近年は、ひと昔前と比べると美容外科への関心が高まり、自身の容姿に関するコンプレックスを解消するために受診する方も増えてきたように思います。インターネットやSNSの普及により、美容外科と検索すればさまざまな美容クリニックの情報を目にすることができるようになりました。そんな時代だからこそ、美容クリニック選びは慎重に行うことが大切です。
美容外科の治療には形成外科の知識と技術が必要不可欠です。しかし、美容外科医の中には形成外科専門医として高い技術を持った医師がいる一方、形成外科専門医の資格を持っていない形成外科医や医師免許のみを取得し形成外科専門医ではない医師もいます。日本では医師免許があれば自己申告により美容外科医として処置を行うことができるのです。形成外科専門医でなければいけないかどうかは断言することはできませんが、難易度が高いといわれている日本美容外科学会(JSAPS)の会員でもある形成外科専門医は、美容外科における高い技術を持っていると考えられるでしょう。ちなみに、JSAPS会員になるのには審査があり、すべての形成外科医が会員になれるというわけではありません。
また美容外科は自由診療であるため料金に差がみられます。料金が安いからといった理由だけで美容クリニックを選ぶのではなく、担当する医師がどのような医師であるか、また医師が直接カウンセリングを行っているのか、アフターケアがしっかりしているかなどもチェックすることが大切です。
形成外科と美容外科は見た目をよくするといった目的は同じですが、治療が必要となる原因や保険診療適用なのか自由診療なのかなど治療に必要となる料金に違いがあります。
美容クリニックを選ぶときには、美容外科の情報をしっかり確認しておくことが大切です。美容外科の受診を検討している方は、料金の安さや話題になっているからといった理由だけではなく、さまざまな情報を確認して自分が納得できるクリニックを選ぶようにしましょう。