美容医療コラム
この記事の概要
ニキビ跡はニキビの炎症後に現れます。ニキビ跡には種類があり、できる原因と治療方法も異なります。美容皮膚科で行う治療の種類と、どんなニキビ跡に適しているのかを解説します。
「せっかくニキビが治ったのに、今度はニキビ跡ができてしまった」「若い頃のニキビ跡が消えない」このような悩みを抱えていませんか?
一度できてしまったニキビ跡をセルフケアで消すのはなかなか難しいですが、美容皮膚科で改善できる場合があります。この記事では、ニキビ跡の種類とその治療方法について解説します。
ニキビ跡は、赤みを伴う「赤みタイプ」、紫色がかった「紫タイプ」、メラニン色素が沈着した茶褐色の「色素沈着タイプ」、皮膚本来の形状自体が変わってしまう「クレータータイプ」、赤く盛り上がる「ケロイドタイプ」などいくつかのタイプに分かれます。その中から、主な3タイプについて詳しく解説します。
ニキビに炎症が起きると患部が赤く腫れ上がり、やがて赤ニキビや黄ニキビに進行します。そのとき皮膚の中は患部に毛細血管が集中し、血液がうっ血しています。その影響でニキビが治った後も、しばらく赤く目立ってしまうのが赤みタイプです。血管損傷があると血液が酸化しやすく、赤紫のニキビ跡になる場合もあります。
赤みタイプのニキビ跡は、できるだけ触れなければ自然と消えていきます。消えるまでの期間に個人差はありますが、1ヵ月ほどで徐々に赤みが落ち着いていき、早ければ2ヵ月〜3ヵ月で目立たなくなります。しかし、炎症が強く同じ部位で炎症が繰り返されると、赤みが取れるまで時間がかかります。
色素沈着タイプは赤みタイプと同様に、炎症を起こしたニキビの治癒後に残ってしまうニキビ跡です。ニキビが炎症を起こすと、その刺激でメラノサイトから大量のメラニン色素が生成され、茶褐色の色素沈着を起こします。日本人のような黄みを帯びた肌色は、表皮に含まれるメラニン色素が多いといわれています。そのため、色素沈着が目立ちやすいです。
色素沈着タイプのニキビ跡は同じ濃さのまま肌に残るのではなく、肌のターンオーバー(肌の新陳代謝)によって徐々に薄くなっていきます。しかし、摩擦や紫外線を浴び続けると、肌への刺激となりメラニンが生成され、さらに濃くなってしまう恐れがあります。肌を擦らない、紫外線を避けるなど生活習慣の見直しが必要です。
クレータータイプは化膿したニキビの部位が凹み、そのままニキビ跡として残ってしまうものです。
このタイプは炎症が繰り返されたり、広がったりしたニキビの治癒後にできやすいです。皮膚は表皮層と、その内側の真皮層からできています。炎症が広がると、真皮層を構成しているコラーゲンやエラスチンにダメージが加わります。コラーゲンやエラスチンには皮膚を支え弾力や形を保つ働きがあるため、ダメージを受けると皮膚を支えられなくなります。そのため皮膚が陥没し凸凹とした、クレーターのようにニキビ跡となってしまうのです。
クレータータイプは赤みタイプや色素沈着タイプ同様、強い炎症があるニキビの治癒後に起こりやすいです。クレーターになってしまったニキビ跡を自分で治すのは難しいため、医療機関での治療をおすすめします。
ニキビの炎症が軽度であっても、爪や手でつぶしたり、過度な刺激を与えたりすると皮膚組織がダメージを受け、ニキビ跡ができてしまいます。このほか、ニキビ跡は体質や遺伝も関係している場合があり、傷跡が残りやすい人や化膿しやすい人などはニキビ跡ができやすいといわれています。
できてしまったニキビ跡を正常な肌に近づけるためには、どのような方法があるのでしょうか。
医療機関で行っているニキビ跡の治療方法は、保険診療と保険診療外のものがあります。また、ニキビ跡のタイプ別で適した治療方法が異なります。
ニキビの炎症後に残ってしまった赤みや色素沈着タイプのニキビ跡は、一般的に外用薬治療が行われます。外用薬には保湿剤や抗炎症剤、美白剤などが含まれており、必要に応じて内服薬を併用します。基本的に外用薬も内服薬も保険診療内ですが、種類によっては保険診療外のケースがあります。
また、美容皮膚科によっては患者さんの希望に応じて治療が行えるよう、ケミカルピーリングやイオン導入・光治療・レーザー治療など保険診療外の設備を取り入れています。
症状により治療期間は異なりますが、肌状態の改善を実感するまで複数回の施術が必要です。
クレータータイプのニキビ跡は、炎症により毛穴の構造・形状が変化しています。そのため、ほかのニキビ跡より治療が難しいとされていました。しかし、美容医療の進歩によりクレータータイプのニキビ跡でも、改善を目指せるようになりました。
クレータータイプのニキビ跡の治療は、レーザー治療、ヒアルロン酸の注入、ダーマペン(極細針で肌の自然治癒力を活用した治療方法)などで行います。
美容皮膚科の目的は、肌をより美しい状態に保つことです。医師によるカウンセリングもあり、自由診療ならではの多用な治療方法で、一人ひとりの希望に沿ったニキビ跡の治療を提供しています。
美容皮膚科でできるニキビ跡の治療方法は、どのようなものがあるのか解説します。
ニキビ跡治療に使用する外用薬・内服薬は、抗生剤、抗炎症剤、保湿剤、美白剤などです。
抗生剤はニキビ菌の殺菌が見込め、一般的にダラシンやアクアチムなどが使用されます。抗炎症剤として、ビタミンCやビタミンC誘導体を使用する場合もあります。ビタミンCには、炎症を抑える作用と肌を本来の色へと導く効果に期待が持てます。保湿剤として代表的なものは、ヘパリン類似物質です。ヘパリン類似物質には保湿だけではなく、血行促進や抗炎症作用が期待できます。
イオン導入はビタミンCをはじめとした美容成分を、微弱な電気を流して真皮層に浸透させる治療法です。電気を流すと肌表面の成分がイオン化し、肌内部へ浸透しやすくなります。イオン導入はニキビ跡の軽減が見込める治療法とされており、赤みタイプや色素沈着タイプのニキビ跡におすすめです。
イオン導入は副作用が少ない治療法ですが、敏感肌の方は刺激に感じる場合があります。また、妊娠中の方や体に金属が埋め込まれている方は、電流を用いるイオン導入の特徴から施術できません。ピアスなど取り外しできるものであれば施術可能です。
光治療では赤みの基になるヘモグロビンや、色素沈着の基であるメラニン色素に吸収される光を患部に照射し、ニキビ跡の改善を図ります。
とくに青色LEDはアクネ菌の殺菌作用があるとされており、赤くなってしまったニキビの炎症の抑制が期待できます。
レーザー治療は赤みタイプや、クレータータイプのニキビ跡に用いられる治療方法です。クレータータイプの中でも直径1.5mm~4mm、楕円形で正常な肌との境界線がわかりやすく、垂直に陥没したニキビ跡に反応しやすいです。
もっとも普及しているレーザーは、フラクショナルレーザーです。ニキビ跡の周囲に無数の小さな穴を開け、コラーゲンの生成を促します。ニキビ跡を小さくし、角をなめらかにするため、跡が目立ちにくくなります。
肌表面の古い角質を薬剤ではがし、毛穴の詰まりを解消する治療方法です。ニキビの予防、赤みタイプ、色素沈着タイプのニキビ跡の改善が期待できます。
使用する成分はグリコール酸やサリチル酸などが代表的で、酸の力で角質を溶かします。一回の施術で改善を実感できる場合もありますが、ターンオーバーに合わせて複数回行うと理想の肌状態により近づけるでしょう。
施術後は少しピリピリする方もいますが、数日で痛みを感じなくなります。施術後のダウンタイム(施術してから回復するまでの期間)が比較的少ない治療方法ですが、新しい皮膚がむき出しの状態になるため、乾燥しやすく保湿や紫外線対策の徹底が必要です。
ヒアルロン酸注入はニキビ跡に直接ヒアルロン酸を注入し、凹んでしまったニキビ跡を盛り上げる治療法で、クレータータイプのニキビ跡の改善が見込めます。
ヒアルロン酸は、もともと体内の関節や皮膚に多く含まれている成分です。安全性は高いとされていますが、妊娠中や授乳中などは施術を受けられません。また注入後、若干の腫れや皮下出血が起こる場合があります。
ダーマペンは、肌本来の再生治癒力を利用した治療方法です。髪の毛よりも細い針が先端に16本ついており、ニキビ跡に微細な穴を開けそのまま美容成分を注入します。
レーザー治療のように皮膚に穴を開けるのですが、穴の深さを0.1mm単位で調整できます。ニキビ跡の改善を目指すには、1ヵ月間隔で4回~6回ほど施術を行います。
これまで諦めていたニキビ跡でも、美容皮膚科で改善が期待できます。美容皮膚科への通院を躊躇してしまう方もいると思いますが、一人ひとりに合った治療方法を医師が提案しサポートしてくれます。適切な治療であなたの理想の肌を目指しましょう。