美容医療コラム
ボトックス注射の効果を考えたとき、思い当たるのは「しわ・たるみの改善」ですが、その他にも使用方法によってさまざまな悩みを解決へ導きます。では、ボトックス注射にはどのような効果があるのでしょうか。
ボトックスとは、注射を用いる美容治療のひとつで、薬剤を体内に注入すると神経に作用して筋肉の動きを制限します。ボトックス注射は顔だけではなく、肩やふくらはぎなど体の気になる部位に使用できます。
ボトックス注射は、ボツリヌス毒素精製剤の一種を使用する美容治療です。ボツリヌス毒素精製剤とは、ボツリヌス菌が精製するたんぱく質を加工したもので、医療用として1980年代から使用されています。
この薬剤を注入すると、注入した部位の筋肉の動きが制限されます。これは神経の伝達をブロックして起こるもので、動かしたくても動かすことが難しい状態になります。つまり、ボトックス注射を気になる部位に打つと、過剰に発達した筋肉が動かないように制限され、見た目がすっきりするのです。
ボトックス注射は顔だけではなく、全身に使用できます。一般的に知られているボトックス注射で期待できる作用は、しわやたるみの改善です。しかし、その他にも使用する薬剤の濃度、注入量、注入する深さによってさまざまな改善が見込めます。具体的に、どのような作用が期待できるのか確認してみましょう。
しわは筋肉の動きが皮膚に加わり、肌表面に折り目のように現れるものです。ボトックス注射を筋肉に打つと注入した部位の動きが制限され、しわが繰り返し同じ場所に刻まれにくくして少しずつ改善へと導きます。
私たちの体は、筋肉が上下で引っ張り合っています。たるみの原因は、この引っ張り合っている上の筋肉が衰えて引き上げる力が弱くなり、下の筋肉の力で皮膚が引き下げられてしまうからです。
ボトックス注射を下の筋肉に注入して動きを制限させ、上の筋肉の力を優位にすると上下のバランスを整えられます。
小顔効果を求める多くの人が気になる部位はエラの張りです。強く噛む、食いしばり、歯ぎしりなどが原因で、エラが大きく発達してしまう傾向があります。これは噛むための筋肉である咬筋(こうきん)が発達し、外側へ張ることが原因です。
ボトックス注射を咬筋に打つと余計な力が顎にかからなくなり、徐々に筋肉の張りが目立たなくなります。エラの張りや小顔効果を実感するまでは個人差がありますが、1ヵ月程度かかることを覚えておきましょう。
口角が下がる原因は、口角下制筋(こうかくかせいきん)という口角を引き下げる筋肉の強さにあります。
口角下制筋にボトックス注射を打つと、口角を下に引っ張る動きが制限されます。
ガミースマイルとは、口を開いて笑ったときに歯茎が大きく見えすぎる状態を指します。実は歯茎の見えすぎを気にして、人前で思い切り笑えない人は多くいます。ガミースマイルの原因は、上唇を動かす上唇挙筋(じょうしんきょきん)と呼ばれる筋肉の強さと、歯並びや上顎の吐出です。
上唇挙筋が原因の場合は、ボトックス注射を打ち上唇の動きを制限すると改善が見込めます。
鼻が大きかったり、鼻先が下向きだったりすると顔全体が平面的な印象を与えがちです。こうした鼻の悩みもボトックス注射で改善が見込めます。
呼吸をしたときに目立つ小鼻の広がりは、鼻の周りにある小鼻を外に引っ張る力が原因です。ここにボトックス注射を打つと、引っ張る力を弱めて鼻を小さく見せます。
鼻筋が下向きで気になるといった悩みの場合は、鼻の下にある鼻先を下へ引っ張る筋肉が原因です。ここにボトックス注射を打つと鼻先を下に引っ張る力が弱まり、より立体的な印象を与えます。
エラが張っている人は噛む力が強い場合が多く、肩こりを併発する人もいます。ボトックス注射をエラの改善と同じように咬筋に打って解消を見込む場合もありますが、直接肩周辺に打つ方法もあります。
肩こりの原因は、うなじから背中にかけて存在する僧帽筋(そうぼうきん)です。ここにボトックス注射を打つと肩に入っていた余計な力がなくなり、肩こり解消へと導きます。また、肩こりの解消だけではなく、首から肩のラインをすっきりさせ、余計な筋肉を落とすと女性らしい滑らかな曲線を作り出す作用が見込めます。
生まれつきやスポーツなどで足の筋肉が発達し、ふくらはぎが太くなったという人にもボトックス注射はおすすめです。
ふくらはぎの過剰な盛り上がりは、ふくらはぎの腓腹筋(ひふくきん)が原因です。ボトックス注射を腓腹筋に打つと余計な筋肉の張りが解消され、細くすっきりとした美脚を目指せます。
ただし、ふくらはぎにボトックス注射を打ちすぎると、筋肉が緩みすぎて歩きづらくなる恐れもあるので、施術は筋肉がついているタイプの人に向いています。
多汗症やワキガの解消にも、ボトックス注射はおすすめです。
多汗症の原因は、汗腺(かんせん)から必要以上に汗が分泌されることです。汗の分泌は通常脳から神経に働きかけ、汗腺に命令が届いて起こります。この汗腺にボトックス注射を打つと神経の働きが抑制され、発汗量を少なくコントロールできます。
また、ワキガはこの分泌される汗に、皮脂や雑菌が混じり悪臭が発生している状態です。汗腺に打つと汗自体が抑制されるため、ワキガの解消にもつながります。
汗腺へのボトックス注射は、半年ほど持続するといわれています。気温により汗の分泌が多い夏や、室内の暖房で汗をかきやすい冬の前に、施術を受けるのがおすすめです。
ボトックス注射についてたくさんの効果を紹介しましたが、メリットばかりではありません。ボトックス注射の施術は、異物を注入する行為によりアレルギー反応や副作用が起こる恐れもあります。腫れや痛み、赤みなどを帯びますが、ほとんどの場合は時間の経過とともに消失します。
また、施術過多により失敗するケースもあります。例えば、口角下がりの改善を目的とした際に、薬剤の注入が深すぎたり濃度が高すぎたりすると、口角を上に引っ張る力が強くなり口元が歪むといったものです。ボトックス注射でもし失敗した場合、時間の経過で元の状態に戻るまで待つことになります。
失敗のリスク、アレルギー反応、副作用をしっかりと確認し、心配な方は事前カウンセリングで医師に相談しましょう。トラブルがあった際には、自己判断せず施術先のクリニックに必ず相談してください。
ボトックス注射は顔だけではなく、全身の気になる部位に施術可能です。
しかし、効果だけではなく副作用やアレルギー反応など、リスクもしっかりと把握しておく必要があります。もしトラブルが出た場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。